まとめ
5回にわたり、クライミングにおけるメンタルについて連載してきた。思いつくままに記載した部分もあるので、まとめとして整理する。緊張とリラックスの均衡が取れたゾーン(究極の集中状態) に意図的に入ることは難しいが、ゾーンに入りやすくするためのフローという状態は作れる。
フローとは、自分が満足できる状態(ご機嫌な状態)であり、ご機嫌な状態は人によって異なるため、まず、自分の価値観やどんな時にご機嫌なのかを整理する。
ご機嫌な状態になるためには、いくつかの方法があり、それは多くの場合、”言葉”や”態度” だったりする。
僕の場合を例とすると。。。
周りの人とセッションしている時は、楽しく集中してクライミングができる。セッションの楽しさは、人が見ているという緊張感と応援がもらえるという承認欲求が満たされている点だと思う。
承認欲求を満たすためには、他人の承認欲求を満たさねばならないので、積極的に同じ壁、同じ課題に取り組んでいる人に声をかけるのが、フローの状態になるためのツールとなる。
(自分を知る)
ところが、いつも人がいるわけではないし、中にはマナーが悪く話しかけたくない人もいる。そのような場合は、問題を切り分ける必要がある。マナーが悪い、人がいないのは、僕の自身の問題ではなく、そこを考えても仕方がない。そこで問題を切り分け、自分の心理状態に目を向ける。
例えば、フロー状態とは程遠い状況の場合には、セッションの時を想定し、トレーニングとして割り切るなどだ。
この時の注意点としては、良いイメージばかりを描かないこと。悪いイメージがあるから良いイメージを持とうとするのであり、無理に良いイメージを持つと無駄な力が入り逆効果になる場合がある。オブザベーションは詳細に行う必要があるが、頭に叩き込んでホールドに取り付いたら、それを意識しないことも大事だ。
(イメージトレーニング)
あとがき
僕は学生時代に弓道を8年間してきた。絶対に的に当ててやる!と気合を入れたときの的中率は良くても75%。悪くすれば、当ててやろうという気がはやり、スランプに陥ることもあった。一方で、何も考えず、的だけに集中している時の的中率は、悪くて75%、平均すれば90%以上だったように思う。この時は、筋肉の緊張、細かなフォーム、矢の軌道などが全体感として把握できていた。これがいわゆるゾーンだったのだろう。
クライミングにおいても、絶対に落としてやる! あのホールドを取ってやる!と意気込めば、無駄な力が入るため、登る前にムーブの詳細についてイメージを固め、ホールドに取り付いたら無心にならなければいけないような気がする。